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私は、ケニア共和国のギクユ人に関する調査を行っています。 “ワンジコ” という名前をもらい、あるギクユ人家族の娘として村に暮らし、社会の仕組みや文化のあり方を内側から学んでいます。近年は、母国を離れてアメリカ合衆国に暮らすギクユ人移民の調査も開始しています。母国での「伝統的」な実践を移住先の状況に照らし合わせ、都合良く組み替えて実践している様子を観察しています。
アフリカの人びとの暮らしから、実は沢山のことを学べます。水道、電気、医療、仕事も十分でない生活をどう生き抜いているのか、難民として隔離された人びとがどう隣人と共存しているのか、世界各国からの援助や先進技術をどう取捨選択して活用しているのか、私たちが経験した事のないような過酷な境遇をどう乗り越えているのか、有限の資源をどう共有して助け合って暮らしているのか、エコで持続的な社会をどう実現しているのか。社会力、人間力とも言える彼?彼女たちの優れた能力から、人間関係や社会関係を学んでいます。
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私がケニア農村に暮らし始めた90年代、人々は貧乏のどん底に喘いでいました。四年制大学を卒業した超エリートですら、仕事がなくて村でブラブラしていたほどです。それから数十年を経た今、アフリカ諸国の経済成長率は希少資源の発掘と中国援助で高まったものの、一般の人々の暮らしは楽にはなりません。1993年から始まった日本主導のアフリカ開発会議(TICAD)も回を重ね、世界各国からの莫大な援助資金を受けてもなお、大多数の農村での暮らしは厳しいままです。
そうした中、「外からの開発」ではなく「内からの開発」として移民の存在をとらえ直すことはできないかと考え始めています。移民への聞き取りを進めるなかで、多くの人がいつかは帰還して母国のために役立ちたいと語っているからです。「アフリカは貧しいから、救いの手を差し伸べることは良いことだ」と思い込むのではなく、彼?彼女たちの人間力?社会力を再評価し、私たちが学ぼうとする姿勢が大切だと思っています。