社会で弱い立場にある人々を幸福にするために
社会的弱者といわれる立場にある人々の力になりたい。俣野菜摘さんは、この思いから、中学?高校時代に国際協力イベントや発展途上国でのボランティア活動に参加していた。聖心女子大学でもSHRET※に所属し、世の中の難民問題について伝える活動に取り組んだ。
発展途上国の人々の生活を助けたいという思いから、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊への関心が強かった俣野さんは、日本語教員免許の資格が取得できる日本語日本文学科を専攻。卒業論文では行政と日本語教師のボランティアの関わり方やボランティアの存在意義について取り上げた。
「近年、日本は労働力として外国人の力を必要としています。ですが、日本語教育に国がかける時間や予算、就労資格といった対応は考慮の余地があります。また、日本の社会?コミュニティーの在り方に大きく関わることですから、外国人労働者と私たち国民はどう理解し合い共生すべきかを中心に、日本語教師のボランティアの在り方を考えました」
これら大学時代の経験を通じて、幸福は「安定」と「信頼」の上に成り立つことに気付き、「社会に安心と豊かさをもたらす仕事がしたい」という思いを抱くようになる。
自分を育ててくれた社会への 感謝を仕事で還元する
「日本銀行は国民経済の発展を支える中央銀行であり、世界の中の日本という視点が必要な立場です。入行以来、役員秘書を務めていますが、世界情勢を肌で感じることができる仕事だと実感しています」
例えば、日本銀行の役員と国内外の要人が面会する場合、そこにどのような背景や意味があるのかを考える。
「一つひとつの仕事の意味を考えながら、知見を得ていこうと意識しています。小さくてもビジョンを持ち、日本の未来について考えていきたいです。日本の経済は世界の中でどのような影響力を持ち、自分はそこにどう関わっているのか。興味を持ったところから調べることが、やがてはその国や個人の幸せを考えることにつながると思うのです」
俣野さんが、「国」という視点、「世界の中の日本」を意識したのは、大学の2年次に自ら企画したカンボジアでのボランティア?ツアーの体験がきっかけとなっている。
「スラム街を訪れ、お土産のお菓子を配った際、子どもたちが自分より小さな子に積極的にシェアしていく姿にハッとしました。精神的豊かさを持っている彼らが、物質的豊かさも得て幸せになるために、まずは教育環境を整備する必要がある。そう考えた時に、国力=経済力の重要さを感じました」
また、自分と同世代の青年が「将来は、国のために働きたい」という夢を語ったことも印象的だったという。
聖心の先生から学んだ 自立した女性の理想像
「『お入りなさい。部屋の扉も心の扉も、いつでも開いていますから』という聖心の創立者マグダレナ?ソフィア?バラの言葉があります。これはまさに聖心女子大学の雰囲気そのものでした。ゼミの先生のお部屋は常にオープンで、勉強からプライベートのことまで、何でも安心してお話しできました」
自分の生き方を模索する中で、聖心女子大学の先生は自立した女性像のお手本でもあり、日常の姿から学ぶことも多かった。
世界を見つめると、女性は社会的に過酷な状況にいまだ置かれている。女性を取り巻く現実を知り、同じ女性としてどうすべきかを考える。そのように、ジェンダーについて学び、考える機会を多く持てたことも聖心女子大学の良さだった。
俣野さんは、今でも外国人労働者問題に関心を持ち、仕事の傍ら日本語教師のボランティアを続けている。他者の苦しみを我が事として思い行動する。その根底には、社会が必要としていることに敏感に気付き、自らより良い状態をつくり出そうとする、「聖心スピリット」が息付いている。
- 日本語日本文学科
日本銀行 政策委員会室秘書課
役員秘書
日本語日本文学科 2014年3月卒業
※SHRET(シュレット)…Sacred Heart Refugee Education Trust
元国連難民高等弁務官で本学卒業生でもある故緒方貞子氏が設立した難民教育基金(現在RET International)の活動を支援するとともに、難民の子どもたちに対する中?高等教育の重要性を訴えるというビジョンのもと活動する学生団体
※所属?肩書きを含む記事内容は、インタビュー当時(2019年)のものです。