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歌舞伎役者 市川門之助氏による特別授業を開講
5月18日(水)、教育学科の専門科目「保育内容の理解と方法」に歌舞伎役者の市川門之助さんをお招きして特別授業を実施しました。「歌舞伎と保育、どうつながるの?」と思われるかもしれません。息の合った間合いをつくりだすこと、声や表情や身振りで人を魅了して引き込むこと、空想や見立ての世界を身体ひとつでつくりだすこと。保育者に必要なスキルと役者さんのワザとは通じ合うところがあります。
授業では、古典から新作まで「歌舞伎とは何か」エピソードを交えながらお話しいただいたあと、楽屋や家庭で子ども時代に遊びながら身につけた「間合い」を手合わせ遊びで体験しました。そして門之助さんが瞬時にして武士、町人、女性になりきる身のこなしから、「らしく見せる」身体のわざの大切さを目の当たりにしました。
最後は『義経千本桜』「川連法眼館の場」から静御前のセリフを全員で声に出し、表現の工夫や情感のこめかたを試行錯誤しながら体験しました。伝統芸能に継承される身体のわざの奥深さ、そのわざを自分のものにしつつ新しく更新していくことの大切さ、「美しい」ことの本質など、貴重な学びに満ちた時間でした。
【学生の感想から】
?「歌舞伎に型はあるけれど、気持の方が大切です」。これはどんな場面においても私たち人間にとって大切なことだと思います。
?「らしさ」を出すための努力。門之助さんの役柄別の歩き方や仕草、声の出し方がとても凄くて驚きました。女形の動きや声が、女性よりも女性に見えるほどにim体育官网_im体育平台-app|下载されていて感動しました。何気ないような仕草が見ている人にどのように映るのか、考えさせられました。
?情景を心に浮かべながら想いを寄せてしゃべることで、聴いている側もワクワクしたり悲しくなったり感情移入して気持ちが動きやすくなる。
?『義経千本桜』を音読した際、「酒に酔うたる」という言葉だったら本当に酔っているようにゆっくりとぐらぐらしながら言ってみたり、様々な工夫がされていることに人間の表現力の豊かさを感じました。
?「らしく見せること」のためには、表情はもちろん指先まで気を使います。手の甲の向きや動かし方、指の角度で、演じる人物の年齢や身分、性別を操っているのです。門之助さんの演技を見て、少しの動作を変えるだけで受け取り方が異なることを実感し、驚きました。これは、保育者と子どもとのやり取りにも共通していると感じました。保育者と子どもにとっては、表情や身振りが大事なコミュニケーションです。ちょっとした動作で伝わり方が異なってしまうのならば、保育においても、子どもとコミュニケーションをとる時に、「らしく見せること」を意識するべきだと感じました。
?抑揚によって想像のしやすさや、その世界に入り込めるかどうかに影響すると感じました。子どもとさまざまな場面でコミュニケーションを取る際にも言葉に変化を持たせて関わることで、相手の気持ちや心情を分かろうとしたり、理解しやすくなる部分があるのではないかと考えます。「〇〇らしさ」が興味深かったです。歩き方やたもと、扇子の使い方、身体の角度等、実際に門之助さんの動きを見て、本当に女性のような立ち振る舞いに見えたことが驚きでした。
(教育学科教授 今川恭子)