コード
HD54-01
系列
系列:キリスト教学
授業科目
キリスト教学特講Ⅳ
副題
(ジョン?ステュアート?ミルとキリスト教)
副専攻
H1
担当者
大久保 正健
単位
4
期?曜時
通年 木3
対象学年
2?3?4年
特記事項
学習目標
19世紀英国を代表する思想家ミルの思想を、キリスト教との対比で考察する。ミルの立っている経験論?功利主義を理解するとともに、ミルが批判するキリスト教についても思想的に明晰に認識することを目指す。
授業概要
授業では、ユダヤ=キリスト教を思想史的に概観し、スコラ哲学、ルネサンス、宗教改革、科学革命、啓蒙主義、進化論と説明をする。その上で、ミルの思想形成をたどり、ミルの主要な著作にふれながら、彼の宗教論である『宗教三論』を解読する。
テキスト
J.S.ミル著『宗教をめぐる三つのエッセイ』(大久保正健訳)
参考文献?課題図書
ミル著『自由論』
ミル著『功利主義論』
ミル著『自伝』
受講生への要望
①この科目のために大学ノート一冊を用意する。
②教科書は必ず入手する。
③出席が重視されるので、欠席をしないように。
評価方法
次の三項目に従って平常点で評価する。
①出席(評価の前提)
②ノート(70%)
③最後の時間に行う授業内レポート(30%)
授業計画
1.西洋思想におけるキリスト教と哲学(概説)
2.ユダヤ教の成立①:出エジプト記と創世記を通じて、ユダヤ教の思想の根幹を学ぶ。
3.ユダヤ教の成立②:オリエントの帝国と預言者。イスラエル国家の興亡とその時期に活躍した預言者の言葉との関係を考察する。
4.キリスト教の成立:ナザレ人イエスの活動とイエスの死後活動したパウロの思想を通じてキリスト教思想の根幹を学ぶ。
5.中世哲学:キリスト教「神学」の成立について考える。
6.ルネサンスと人文主義:ギリシア?ローマの古典や聖書原典を読むことによって開かれた新らしい精神とその展望を理解する。
7.宗教改革とピューリタン革命:キリスト教の分裂が思想?哲学にどのように反映されるかを考える。
8.科学革命の衝撃:コペルニクス、ガリレオ、ニュートン等によって推進された数学が自然観に与えた影響を取り上げる。
9.英国自然神学の成立:王政復古によって成立した英国独自の思想伝統を考察する。王立協会と自然神学がテーマになる。
10.理神論の登場と退場:キリスト教を批判する自然宗教として登場した理神論の特徴を解説する。
11.蓋然的知識と懐疑論:バトラーとヒュームによって導入された新しい「経験論」を前の世代のホッブズやロックの経験論と比較する。、
12.キリスト教と功利主義①:キリスト教と幸福原理の結びつきである神学的功利主義を紹介する。
13.キリスト教と功利主義②:キリスト教との関係を求めない世俗的功利主義であるジェレミイ?ベンサムとその学派について解説する。
14.ジェイムズ?ミル:ジョン?ステュアート?ミルの父親の経歴、ベンサムとの交流などを紹介する。
15.天才教育とその結末:息子ジョンがジェイムズから受けた教育を、彼の生育過程のなかで見る。
16.若き日の交流:親友スターリング、サン?シモン派のデシュタール、カーライルなどとの交流を見る。
17.運命の出会い:ハリエット?テイラーとの運命的出会いの事情を考察するとともに、ユニテリアニズムの内実を考える。
18.真理の基準:『論理学体系』(1843)を通じて、ミル哲学の哲学的基礎を確認する。
19.精神的非常食:妻ハリエットとの密接な思想的交渉によって生み出された傑作『自由論』(1859)の要点を解説する。
20.功利主義と直覚主義:『功利主義論』が書かれた背景にある英国観念論を紹介する。
21.オーギュスト?コントの実証主義:功利主義とともにミルの宗教論の背景をなしている実証主義とコントの「人類教」について解説する。
22.宗教の功利性:ベンサム派のジョージ?グロートによってベンサムの草稿をもとに書かれた『自然宗教が人類の地上の幸福に及ぼす影響の分析』(1822)の内容を紹介する。
23.生物学的自然神学:ウィリアム?ペイリーの『自然神学―神の存在属性の証拠』(1802)を紹介する。
24.神の存在と属性:スコラ哲学、カント哲学等と比較しながら、教科書のミルの議論を検討する。
25.奇跡:デイヴィド?ヒュームの議論を土台として、ミルの議論の筋を追う。
26.霊魂の不死:ミル独特の認識論と霊魂不死論との関連を考察する。
27.自然主義とキリスト教:ミル思想と進化論との接近に注目するとともに、リチャード?ドーキンスとその批判を通じて、自然主義とキリスト教(超自然主義)を対比して考える。
28.予備:以上の話が時間不足になることを想定して予備の時間を設定しておく。
29.予備
30.授業内レポート:予め設定された設問に対して授業内でレポートを書く。
自由記述欄
上記の授業計画に書かれたことについては、全て言及することになるが、話の順序は、多少変更されるかもしれない。
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